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政府が高速道路などを利用して荷物を自動運搬する「自動物流道路」の導入を検討している。今後10年で実現を目指す方針という。岸田文雄首相は夏までに想定ルートを選定するよう指示した。
自動物流道路は自動輸送カートによって荷物を自動運搬する物流の専用レーンだ。運転手が不要なうえ、トラックの減少で高速道路の渋滞が緩和されれば、二酸化炭素の排出削減にもつながる。
トラック運転手の残業規制強化に伴い、荷物を運べなくなる物流危機が懸念されており、抜本的対策の一つとして整備を進めたい。
国土交通省が有識者検討会で2月から技術的な課題などについて議論している。高速道路の路肩や中央分離帯、地下などのスペースを活用することが想定されている。カートの輸送先には物流拠点を設け、最終的にトラックで荷物を届ける。
海外には先行した検討事例がある。スイスでは地下に自動輸送カートが走る貨物専用トンネルを建設し、主要都市を結ぶ総延長約500キロの地下物流システムの構築が計画されている。7年後までに最初の区間約70キロの運用を開始し、今後約20年間で全線を開通させる計画だ。
英国も鉄道のレール横のスペースなどを利用した自動物流システムを検討している。物流輸送用に開発した低コストのリニアモーターを使用することが想定されている。
トラック運転手の時間外労働を年間960時間に制限する残業規制が4月から導入された。輸送力低下に伴う物流危機は「2024年問題」ともいわれ、令和12年度に運べる荷物は元年度に比べ34%減るとの試算もある。物流効率化が急務となっている。
政府は昨年10月、緊急対策をまとめ、宅配便の再配達半減や、トラックによる輸送を鉄道や船舶に置き換える「モーダルシフト」を進めるなどとした。物流の効率化を図るため、業界の垣根を越えて配送トラックを共同利用する企業の取り組みも広がっている。
物流の停滞を招けば暮らしや産業に多大な影響が生じかねない。「24年問題」は今後も続く構造的な課題だ。自動物流道路に限らず、官民挙げて知恵をしぼり有効な対策を継続して導入していくことが求められる。
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2024年4月26日付産経新聞【主張】を転載しています